有識者会議は、2023年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とする政府方針に関し、さらなる増額を検討するよう提起している。会議の委員には、次期戦闘機の国際共同開発に携わる三菱重工の宮永俊一会長が名を連ねる。
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防衛費5年43兆円に増額求める声 有識者会議、円安・物価高で「現実的な見直しを」
防衛省は19日、令和4年12月に策定した国家安全保障戦略など安保3文書で掲げた防衛力の抜本的強化に関する有識者会議の初会合を同省で開いた。委員からは、令和9年度までの5年間で防衛費総額を約43兆円と定める政府方針について、円安や物価高などを踏まえ増額を視野に見直しを求める意見が出た。政府は43兆円枠を堅持する考えだが、会議の議論が影響を与える可能性もある。
会議は榊原定征元経団連会長、北岡伸一東大名誉教授、森本敏元防衛相ら17人の委員で構成。座長に就いた榊原氏は会議で「43兆円の枠の中で、求められる防衛力装備の強化が本当にできるのか。現実的な視点で見直す必要があるのではないか」と述べた。
関係者によると、会議では防衛費について「為替変動を加味しない数字は意味がないのではないか」といった発言もあり、複数の委員が43兆円の増額を検討する必要性に言及した。
政府は3文書で、9年度までの5年間の防衛費を総額約43兆円と決めた。しかし、最近の過度な円安や物価高騰で輸入装備品などの単価が上昇し、計画数量を調達できない恐れがある。
有識者会議は、3文書に設置方針が明記されていた。安保環境が厳しさを増す中、従来の陸海空に加え宇宙・サイバー・電磁波など新たな戦闘領域に対応するため、専門家から助言を得て戦略的な政策立案につなげる。
木原稔防衛相は会議で「将来の防衛力をつくる上で国民の理解が重要だ」と指摘。10年度以降の防衛費も視野に「ポスト43兆円の話をいかに進めるかも並行して検討していく場にしたい」と語った。