欧州連合(EU)欧州議会選の結果の影響は、EUの政策にとどまらない。フランスでは国民議会(下院)が解散されることになるなど、主要なEU加盟国の国内政治も揺さぶった。
マクロン仏大統領は9日、欧州議会選で自身の与党連合が極右政党「国民連合」に大敗したことを受け、「何ごともなかったように振る舞うことはできない」と国民議会の解散を表明した。 フランスでは2022年の国民議会選でマクロン氏の与党連合が第1勢力を維持したが、過半数を大きく割り込み、内政遂行で困難に直面する。マクロン氏は27年の大統領任期満了まで現状に甘んじるよりも、この時点で国民に選択を迫って、起死回生を図るという賭けに出たようだ。 フランスで大統領が議会を解散するのは1997年のシラク大統領(当時)以来。この際はシラク氏の中道右派与党が惨敗し、左派の首相とのコアビタシオン(保革共存政権)を迫られた。解散総選挙で国民連合が票を増やせば、内政が混乱する恐れがある。
ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が同国に割り当てられた96議席のうち、15議席を獲得して中道右派の国政最大野党に次ぐ第2党に躍進。中道左派「社会民主党」などショルツ首相の連立与党3党のいずれをも上回る結果となった。 ドイツでは9月に旧東ドイツ地域で3州議会選挙を控える。同地域でAfDは強く、欧州議会選の結果を追い風に第1党をうかがう情勢だ。ショルツ政権は対抗のために政策を「右傾化」させるとの見方も出ている。 オーストリアではロシアに融和的な極右政党「自由党」が第1党となった。オーストリアでは年内に総選挙が予定されており、欧州メディアは欧州議会選をその「試金石」とみなしていた。自由党幹部は今回の勝利を「次の選挙に持ち込みたい」と強調した